阿波木偶レポート 伝統芸能 

阿波木偶「三番叟まわし」

徳島県の伝統芸能のひとつとして「人形浄瑠璃」は良く知られていますが、実はもうひとつの人形芝居があります。それが「阿波木偶箱廻し」です。
阿波木偶(あわでこ)とは、阿波=徳島 の 木偶(でく)=木彫りの人形 という意味があり、地元では木偶のことを「でこ」と呼ぶことがあります。

阿波木偶箱廻し

「箱廻し」とは一人遣いの人形芝居で、人形を箱に入れて担ぎ、家々の門前や人の多く集まる大道などで演じられました。
箱廻しは通常2、3人で行われ、ひとりで木偶を操りながら浄瑠璃を語ります。木箱二つに数体の木偶を入れ、天秤棒で担いで全国を移動し、人形文化を各地に伝えることになりました。そして各地に根付いた人形芝居に影響を与えたと言われています。

阿波木偶

阿波木偶の演目は大きく分けて、その年の家内安全や商売繁盛を祈る「三番叟まわし」と、人気演目の「傾城阿波の鳴門」などを大道で演じる「箱廻し」の2種類があります。

2024年1月のこの日は、天下泰平,五穀豊穣,家内安全,無病息災を祈る「三番叟まわし」のほんの一部が披露されました。
正月の祝福芸には、太神楽(獅子舞)や春駒などがありますが、徳島をはじめその近隣では正月を彩る祝福芸はこの「三番叟まわし」です。荒神を拝んだ後、千歳・翁・三番叟で「式三番叟」を演じ無病息災や五穀豊穣を祈り、「えびす」が商売繁盛や豊漁を予祝します。

阿波木偶
阿波木偶「三番叟まわし」
阿波木偶

この日の講演の語り部として登場した辻本一英さんは、阿波木偶箱廻し保存会の顧問で、阿波木偶の伝統文化の背景にあった部落差別とそれによる日本の伝統文化の消失の危機にあったことを訴えられていました。

辻本一英さん

箱廻しの歴史的文化遺産があまり残っていないのも、差別が影響しており、正体を隠すため、道具を川に流すことが多かったためだそうです。
それでも苦労して集めた「阿波木偶」の資料は、阿波木偶人形会館、人形のムラ 阿波木偶文化資料館などで見ることができます。

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